「ホイールの再発明」以来 (つまり、何十年もの間子供用自転車用扱いだったシングルスピードが流行するようになって以来ってこと)、シングルスピードのセットアップについては多くの議論があったんだ。確かにシングルスピードでシステムは単純になった。引っ掛かったり調整がずれる原因になる可動部品が少なくなったからね。ただ、どんなドライブトレーンでも、チェーンラインからチェーンリングボルト、最適なコグや使用するチェーンまで、特別な配慮が必要なことには変わりがない。とはいっても「自分にはどのギアの組み合わせが合ってる?」っていう質問はしなくてすむね。
まぁこの質問に正しい答えは無いんだけどね、バイクもライダーもみんな違うし、地形だって地域で全然違うしね。例えばほとんど平地でシングルトラックに乗るのと、山道を走るのじゃ全然違う。ここでどのギアが正しいのかという質問に直接答えるつもりはないけど、その代わりにギアレシオの決め方や関連する問題点について、初心者向けのレッスンをしよう。それじゃシングルスピードギア入門を始めよう。そんな話は退屈だって人もいるよな。そんな時は、他のスピュー で役に立つ情報を探すかバイクで走りにいってくれ。
ストレートレシオ
たいていの人がシングルスピードを始めるときは 2:1 が一般的だ。これは、一般的なギア比、つまりチェーンリング(フロントギア)にコグ(リアギア)の 2 倍の歯数があるギアの組み合わせで、32/16 が一番一般的なパターンだ。これはどういうことかというと、ギア比 2:1 のバイクはクランク 2 回転で、リアホイールが 2 回転する。ギアの組み合わせを 32/18 にすると、ギア比は 1.78:1 になるから、クランク 1 回転でリアホイールが 1.78 回転になる。ギア比が低ければペダルは軽く回せる(同じサイズのホイールで比較した場合)、ヒルライドや低速のテクニカルセクションに向いているね。ギア比が高いと登りはきつくなるけど、クルージングのスピードはクランクの回転数が少なくてもあがる。
ギア比 2:1 が大半を占めているのは、これが 26 インチホイールのオフロードバイクに適しているから。ひとりひとりに合ったギア比を見極める出発点にもなるギア比だってことだ。ただし、このギア比が標準になったのは、どのオフロードバイクのホイールも 26 インチだった頃の話。実際のギア比はペダルの重さや軽さに直接影響するからホイールのサイズでも変わってくる。それでも、説明する時にはギア比はわかりやすいので、ギアのセットアップにはギア比は欠かせない。
ストレート比はいつ使う?
経験上、どんな時でも。セットアップがどんな感じになるかをもっと正確に示すことができるちょいと複雑な計算方法っていうのもあることはある。とはいっても、リングとコグの歯数がすべての計算の元になることには変わりはないし、ある組み合わせと別の組み合わせを単純に比較するという目的のためには一番役に立つんだ。俺は、自分のギアを組んだり、誰かとギアの選び方の話をするときにはギア比を一番よく使うよ。
ギアインチ
少しばかり正確さが要るのがギアインチと言われるモノだ。これはギアレシオとホイールの直径 (全体の直径で、空気を入れたタイヤも含む) を組み合わせたもので、クランクを 1 回転させた時に君の自転車がどれだけ進むかを計算する。昨今のほとんどの自転車チェーンは ½ インチピッチ標準 (ピン間 1/2 インチ) を守っているので、計算は簡単で (自転車業界にとってはバカバカしいほどだ) 世界共通だ。計算式はこんな感じ:
ギアインチ = (車輪の直径インチ) x (チェーンリングの歯の数)
コグの歯の数
例えば君が 32/16 ギアリングを使っていて、リアホイールの直径が 26 インチだったら、計算は 26 X 32 / 16 で 52 ギアインチになる。値がでかいほど、クランク 1 回転で進む距離が長くなる。これは単なる距離換算ではなくて、相対的な「感覚の」測定なんだ (ハイホイールバイクの時代の遺物)。実際に移動する距離を出すには、このギアインチの値に円周率 (3.14) をかけてくれ。
ギアインチはいつ使うのか?
タイヤのサイズの比較が重要な場合にギアインチを使う。自転車のコグだけを交換して、あとはそのままの場合、ギアインチは必要ない。でも例えば 26 インチホイールのシングルスピードバイクに乗っていて、そのギアの組み合わせが好きで、その感覚を新しい 29 インチホイールバイクでも保ちたいと思ったなら?ギアインチの出番だ。32/16 コンボを 26 インチホイールで使うと、ギアインチは 52 インチだ。でも 32/16 コンボを 29 インチホイールで使うとギアインチが 58 インチになる。同じような感覚を得るには 18 歯を 29er のリアに使うと、ギアインチは 51.6 インチになる。
分かったかい?
ゲインレシオ
自転車マニアにして数学好きの、偏屈なショップ経営者の老人、古い自転車技術に関する小難しくも最も完全な情報アーカイブ ([url=http://www.sheldonbrown.com]http://www.sheldonbrown.com[/url]) の作成者である故 Sheldon Brown は、ギアインチはもはやかつてほど有効な指標では無いとして、ゲインレシオというものを提案した。これはギアインチとクランク長を使って計算する。クランク長が実際のライディングに影響するからだ。クランク長に関する課題は多く、何が正しいクランク長で、何が正しくないのかに関する意見も様々だ。それが有用で定形の方程式なんだけど (つまり、クランク長が簡単に数値に反映される)、俺はやりすぎかなと思う。これだって結局比較にしか使えないんだ。ゲインレシオについての彼の意見では、ストレートレシオを結構非難していて、「サイクリングの狭いゲットーに居る奴とだけ関わっているサイクリストは、しばしば自分が使っているチェーンホイールとリアスプロケットを指名するだけしかしない。」てなことを言っている。これは違うと思うよ。彼はあまりに簡単にシンプルなストレートレシオの有効性を捨てちゃったんだと思う。
ゲインレシオはいつ使うのか?
「いままで全然知らなかったけど、Sheldon の一番価値のある計算式を見つけたよ!」と君が書き込んで知らせてくれる前に、俺は首まで砂の中に埋まって「それは難解な自転車知識を振り回す場所には似合わないし、ギアの感覚に影響する、しかし簡単に計算では出ない他のことを考えろ」と提案する。
1.バーの幅。バーの幅が広い方が酸素の摂取量が増える (一応それでより強く長く感じられるということだが) という話があるだけでなく、幅の広いバーは、長いクランクと同様、サドルから立ち上がった場合に凄い力を伝えることができる。これはギアを正確に感じる感覚に直接影響はしないけど、長いクランクアーム
2 を使うのと同じように、少しばかり固いギアを押す能力には影響する。タイヤの重さ。タイヤの重さが与える影響には 2 通りある。自転車の総重量に加えられるので、ギアリングの決定時にある程度考慮する価値があるのと、でもそれ以上に重要なのは、タイヤが重くなると回転重量が増すことだ。ホイールの外周の重量がより増すと、ホイールの速度を上げるのにより苦労する (またホイールが慣性をより多く持つので、速度を保ちやすくなるんだけど、減速する場合もやはりより苦労する)。最近、俺は大きくて節くれだったタイヤを軽量の、ロートレッドのレーシングタイヤに変えて、それ以外は元のままなんだけど、その違いは顕著だったよ。自転車の加速は早くなり、登りも良くなった (トレッドホックアップのことじゃなくて、上り坂に必要な力のことを言っている)。俺の場合、加速が増加した原因の一部は、トレッドが転がり抵抗にどのように作用したかによるものだけど、主な違いは重量だ。似たような種類でサイズが違う 2 種類のタイヤで試してみれば、俺の言ってることが分かるだろう。
3.自転車の総重量。基本的にはタイヤの例で言ってることなんだけど、重たい自転車 (例えば君の古い Schwinn High Sierra をシングルスピードに変えるとか) にはより軽い自転車より低いギアが必要な場合がある。逆に、軽量のレーシングマシンは多分高いギアで走る。
最終的な回答(ある意味)
ポイントは、すべてが定量的ではないってことだ。完璧なギアを得るために計算に頼ることはできない。繰り返すよ。どんな路面で乗るかとか、君のフィットネスレベル、スキルレベル、さらにその日がどんな一日になるか、でも好きなギアは変わってくるんだ。一番大事なのはもちろんそのギアをどのバイクで使うかだ….高圧の薄いタイヤを装備した固定ギア自転車だったら、かなり高いギアレシオが必要だ。なぜなら、軽量のロードマシンであり、固定ギアはダウンヒルでは難しい傾向があるからだ。だから、ほとんどの乗り手は高いギアを選ぶよ。アップヒルでは少し厳しいけれども、下りの時にライダーの脚を激しく打ち付けない程度の。実際、固定ギアのライダーはギアを高くする傾向がある。特に、例えば 2.75:1 辺りのレシオを使って、険しい場所で。Surly 仲間の Seattle Brad が言うように、いつでも登れるけど、降りてくるのは全く違う。付け加えるなら、ほとんどすべてのことには慣れると思うけど。もちろん、完全に間違えて、簡単すぎたり難しすぎるギアで終わることもあるけれど、だいたい近いギアで十分に乗れば、すぐに普通だ感じるだろうね。俺は平地に住んでいて、乗っている固定ギアは、2.3:1 と固定ギアのスタンダードからはかなり低いけれども、町中を走るには丁度いいよ。シアトルに住むなら、下り坂が多いからギアを高くすると思うな。近所の仲間にどんなギアの組み合わせで走っているか聞いて回ってその近くにすればよいよ。
それからもうひとつ、
考慮に入れるべきことがあって、それはリングとコグの組み合わせが違うのに、同じ比になることがあるってことだ。32/16 は 2:1 だけど、36/18 も 34/17 もそう。じゃどうやってその中からひとつを選ぶんだろう?難しいか?まぁ、ちょっとはな。小型のチェーンリングはバイクの下のクリアランスは良く、だからライディングが主に岩やら丸太やらに満ちたオフロードのものだったら、小型のチェーンリングで行くのは多分いい考えだ。一方大型のギアはよりチェーンが巻き付くので、ギアの歯がチェーンに接触する量が多くなる (つまり推進力が増す)。
それで、例えば 16 歯のコグを持ってたとする。理想的なドライブトレーンでは、チェーンはテンショナーやディレーラーに干渉されることなく直接リングからコグに走り、また戻るんだけど、コグの約半分の歯は常にチェーンと接触してる。ライダーが生み出すドライブトルクの全てがコグの歯に噛み合ったチェーンを思いっきり引っ張る。理想的なシングルスピードのドライブトレーンでは、チェーンの張力はホリゾンタルドロップアウトかスライディングドロップアウト、またはエクセントリック BB かハブのどちらかで維持されてるんだけど、これは多分問題にはならない。でも例えばバーティカルドロップアウトを SS に変更したフレームの場合、チェーンの緩みを締めなきゃならないので、Surly の Singleator のようなテンショナーを追加したくなるだろう。ほとんどのテンショナーにはスプリングが内蔵されていて、テンショナーはコグから離して、チェーンを押し下げて取り付けられてるから、チェーンの巻き付きは減る。この 2 つから分かることは、ペダルトルクをかけると、小型のコグはチェーンがコグの歯の上を前方にスリップする可能性が高いということだ。この場合、大抵 18t くらいの大型のコグと、それに合った快適なギア比が得られるチェーンリングへの変更を勧めることが多いんだ。
それは考慮しといて欲しい。 もうひとつ考えるべきことは、シングルスピードのリングとコグのチェーンの摩耗が、他のリングとコグの摩耗とは違うということだ。つまりマルチギアの自転車ではより大型のリングとコグを使うので、摩耗がより多くの歯に分散して、つまり長持ちするってことになる。もし Surly のステンレスリングを使ってるなら大した問題じゃないけど、アルミリングの場合、小型のリングは交換する度合いが、大型のリングより多いだろうね。リングやコグを長持ちさせたい場合、奇数歯のサイズのものを使うといい。
これらは基点になる基本的なギアレシオだ。平均的で中庸な選択肢だ。 ギアリングのジレンマに完璧に答えてくれるものじゃないけど、どこから始めたらいいかわからない人は、ここから始めてみたらいい。
26 インチホイールオフロード:2:1
700c オフロード:1.75:1
700c オンロード:2.3:1
とりあえずこのトピックに直接関係することついては、こんなところかな。さあ、バイクライド楽しんできて。