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自転車。パーツ。カオス

分かったよ、君はこの自転車に数日乗った。新車で買ったのかもしれないし、中古車かもしれないし、兄弟から盗んだのかもしれない。しかし数回乗ってみて、君はシートポストが少しずつ下降することに気が付いた。「なんじゃこりゃ?」と呟いて、それから多分大勢の仲間にも言って、フードの下でいささか熱くなり始めたかもしれない。「なんでこれがスリップするの?」「なんでシートポストがスリップするの?」

基本原理:

フレームにフィットしたポストは、横方向のあそび (左右交互の動き) も無くフレームのシートチューブ内にスムーズにスライドする。つまり、シートポストの外径はフレームのシートチューブの内径に非常に近いものである必要があるってことだ。フレームのシートチューブには、チューブのトップに縦方向の短いスロットカットが入っている。シートポストクランプはチューブのトップを一回りする。クランプボルトを締め付けると、フレームの材質がわずかに曲がり、(スロットがこの曲がりを起こす) シートポストに対して締まるんだ。もちろん、これでポストが正しい位置に固定されるんだ。何らかの理由で充分に締まらなかった場合、ポストは荷重を受けてスリップしていく。 

基本についてもっと詳細に:

どんな部品であれメーカーの仕様は、シートチューブの直径であれ、シートポストの直径であれ、その他何でも、エラーのマージンを少し許容している。つまり、たとえ新品であっても、シートチューブの内径はわずかに大きかったり小さかったりすることがあって (10 分の 1mm とか 100 分の 1mm とか、そんな話)、それは仕様に含まれてる。ポストもそうなんだよ。だから君のフレームのシートチューブホールが仕様よりごくわずかに大きくて (例えば、27.2mm の仕様で実際は 27.29mm だったとか) シートポストが使用よりわずかに小さい場合、ポストがスリップすることはある。チューブとポストがメーカーの仕様の許容範囲内にあるなら、これは保証の対象にはならないんだ。実際、あるポストメーカーは (名前を明かすつもりはない) 実際にポストを図面のサイズよりやや小さめに加工して、シートチューブの製造のばらつきを吸収している (例えば図面で 27.2mm なのを実際は 27.1mm あたりで仕上げてる)。こういうポストは新品で、高価で、フレームにぴったり合ったサイズだと書かれていても、スリップする傾向が高いんだ。 ここまで、ポストもフレームも何もかもが新品だと仮定して話をしてきた。フレームやポストが中古品なら、このばらつきは摩耗や亀裂のせいで拡大してることがある。長年にわたって何度もポストの高さを調整していると、フレームもポストもすり減ることがある。とくに定期的にどちらも手入れをしていないとなおさらだ (手入れなんて、誰かしてる?)。砂粒や汚れは、特にこういう締まった場所では、サンドペーパーみたいに機能するんだ。念のために言うと、ものすごく微量なモノの話をしていて、それでもスリップが起こる原因になり得るんだ。あるいは、自転車の前の持ち主がシートチューブをフレックスホーンに加工していて、最初の頃より少し広がってるのかもしれないし。ポストかフレームが明らかに悪い場合もあるけど、そうでなければ、なかなか見ただけでは原因がわからないだろうね。

スリップの第二の原因:それ以外に、ポストスリップの影に隠れた問題としては、特に、ポストにテフロンの潤滑剤を使うポストの過剰なグリース塗布の問題がある。あるいは、ライダーの体重、さらに極めて粗いトレールなど。これらは二次的な原因だけれども、一次的な原因を悪化させるだけでそれ単独でスリップを引き起こすことはない。しかし、一次的であるか二次的であるかに関わらず、これらの理由はいずれももっとも一般的な問題ではない。

それはともかく:シートポストがずれ落ちる原因として最も多いものは、サイズやライディングのタイプに合っていないシートポストを使用してることだ。4mm のアレンキーで締めるような可愛らしい小っぽけなクランプはロードバイクならともかく、マウンテンバイクでは役にたたない。大柄なライダー、オフロードの荒れた路面みたいなポストがずれる原因がある場合には、もっと頑丈なクランプが必要なんだ。俺たちが作った Constrictor というモデルはフレームとの接触面が広くて、大きな 8mm ボルト(6mm アレンキーで締め付ける)を使っているから、トルクをたっぷりと掛けられるし、ねじ山も十分に用意されている。Constrictor は特にシートポストがずれる問題に対処するように設計されているが、頑丈なクランプを使っている場合でも、それがうまく機能するためには知っておくべきことがある。

シートポストの取り付け方:最初に、ポストとシートチューブの内部表面にグリースを塗らなきゃいけない。薄いフィルム状に広げて、スライドしやすいようにするんだ。テカテカに塗らなくてもいいけど、腐食しないように、ポストの抜き差しが簡単にできる程度には塗ってくれ。  次にクランプの内側 (フレームに接触する部分) とクランプボルトのスレッドに、グリースを薄くフィルム状に塗るんだ。そのボルトには凄く圧力をかけてるし、グリースがすべての部分の詰まりを防ぐので、クランプは最大限の締め付け能力を発揮できる。ほとんどの場合、どんなグリースを使ってもいいんだけど、状況によっては特定のグリースを使うべき場合もある。 ステンレススチールのポストクランプのボルトの場合、ボルトのスレッドにはオールテフロンのグリースを使うのがベストだ。 最後に、ボルトをメーカーの仕様に従ったトルクで締める。君のアプリケーションにあまりにダメなクランプを使った場合、ポストをスリップさせないように十分締め付ける前に、クランプボルトを折ったりフラットがへこんだりするからね。それは保証には含まれないぞ。分かってるかな?Surly の Constrictor や他の適度に丈夫なクランプを使ってて、ポストとクランプに互換性があることが確かで、それでもポストがスリップするなら、俺たちが「カウボーイ」と呼んでる状況なので、近所の自転車整備工に相談する必要がある。